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ラグビー 今泉清コラム「スーパーアタックル」

【第10回】組織がジレンマに陥る、均衡と不均衡の関係とは ~東芝府中が最終戦を待たずしてトップリーグ2連覇達成。好調を維持できなかった三洋電機~

vsサントリー(第11節)でも、堅いディフェンスで快勝した東芝府中。さらなる不均衡を作り出すことが、組織を成長させ強化していく。

vsサントリー(第11節)でも、堅いディフェンスで快勝した東芝府中。さらなる不均衡を作り出すことが、組織を成長させ強化していく。

 東芝府中が、最終戦を待たずして2連覇を達成した。
 三洋電機は第10節のワールドに続き、第11節でヤマハ発動機にも敗れ、得失点差からNECに順位をひっくり返されて、現時点で3位に転落してしまった。
 開幕から好調を維持していた三洋電機の失速。その背景に何があるのか、私なりに分析してみた。

 開幕から破竹の8連勝の勢いを維持できなかった理由を、一言で表現するのは難しい。あえて言わせてもらえば、「油断」「気の緩み」「驕り」などの言葉が当てはまるだろう。宮本監督の下、今年に賭ける意気込みは相当なものがあったはずの三洋電機。にもかかわらず現在のこの状況は、高いモチベーションを維持して勝ち続けることが、いかに難しいことであるかを物語っている。どのチーム、あるいはどのスポーツも同じであるが、チームまたは組織の中で意識改革をして、順調に改革が進む。すると、次には必ず壁にぶち当たる。
 例えば「昨年の覇者・東芝府中に勝つ」を目標に掲げたとする。オフシーズンから、基礎体力・ラグビーの基本的スキルを磨いて、その一つ一つを組織プレーに統合していく。そして目標として掲げていた「東芝府中に勝つ」を実行に移す場にきて、当初のプラン通りに事が進み、目標を達成させる。ここまでは、よくあるプロセスだ。問題は、ここからである。
 三洋電機の選手たちは、宮本監督の下、環境の変化(昨シーズン途中に監督の交代劇があった)にも適応してここまできた。三洋電機ラグビー部に関係するスタッフ全員が一丸となって危機を乗り越えてきたのだから、適応能力があって素晴らしいと思う。それでは何故、三洋電機は失速したのか。この問いを考える上で、ヒントになる論文があるので紹介したい。

 ダイアモンド社から出版されている「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」に、不均衡の創造という項目がある。その部分を引用させてもらうと、
 「適応力のある組織は、環境を利用してたえず組織内に変異、緊張、危機感を発生させている。あるいはこの原則を、組織は進化するためには、それ自体をたえず不均衡状態にしておかなければならない、といってもよいだろう。不均衡は、組織が環境との間の情報やエネルギーの交換プロセスのパイプをつなげておく、すなわち開放体制(オープン・システム)にしておくための必要条件である。完全な均衡状態にあるということは、適応の最終段階であって組織の死を意味する。逆説的であるが、『適応は適応能力を締め出す』のである。」

 この論文を、今の三洋電機にあてはめて考えてみる。昨シーズン途中で監督が交代するドタバタ劇を演じる事態になり、緊張感、危機感がチーム全体を覆ったはずだ。これこそまさに、三洋電機内部で組織が「不均衡な状態になった」と考えていいだろう。いろいろな情報に対して、パイプを繋ぎ自己革新に必要なものを収集したのだ。その一つが、ディフェンス・システム。ニュージーランド、カンタベリー州代表のディフェンスシステムをヒントに、三洋電機に合う形に加工して、自分たちのものにした。これなどは、三洋電機の中で「この危機を乗り切ろう」とする思いがあったからこそ適応できたのである。
 そして今。先程の論文の中でも紹介したが、「適応は、適応能力を締め出す」。このことが、三洋電機ラグビー部の内部で起こっていたのではないだろうか。三洋電機に負けた東芝府中も同じく、負けた時には東芝府中ラグビー部の内部に同じ現象が起こっていたのではないだろうか。
 以上のことは、監督・コーチが常にアンテナを張って、チェック機能を働かせて、注意する意識を持たなければならないことだ。そして、この部分が継続して勝ち続けるためのいちばん難しいと言われる部分であり、この部分がコーチングの肝心要の肝なのである。

 東芝府中は、三洋電機に負けたことで自然発生的に組織内部で不均衡状態を作り上げることができた。だから三洋電機戦以後、再生してトップリーグ2連覇に繋がった。一方の三洋電機も現在2連敗していることが組織に不均衡な状態が生んだはずだ。もう一度目標設定をして、整理して次の機会に備えれば、必ずまたよい結果に結びつくだろう。一度経験しているので、均衡状態への回復を目指して行程速度を速めていければ、今度は問題ないだろう。
 組織は均衡状態〈バランスのとれた状態〉を目指して進化を続けていく。だが均衡状態を作り上げると、そこは終着駅。そこから再び不均衡状態を演出するために、常に目標設定を変えて、緊張と危機感を作りださなければならない。この作業がうまくサイクルとして回せるようになると、孫子の言う「彼を知り、己を知れば、百戦をして危うからず」の状態になれるのだろう。
 三洋電機は、ここにきて失速してしまったが、個々の能力・才能、そしてリーダーシップに素晴らしいものを持っているチームだ。チームの選手・スタッフが、もう一度宮本監督を信じて自分たちの力を信じて意思統一ができれば、今シーズン中に復活して、残された大会においてチャンピオンになれるチャンスは十分ある。今後の三洋電機が、どのような復活を遂げるのかが楽しみである。

 東芝府中は見事に均衡状態から不均衡状態に組織を戻して進化を続け、自信を取り戻しての2連覇は素晴らしい。薫田監督・冨岡キャプテンのリーダーシップの賜物であろう。
 2連覇おめでとうございます。本当に、いい復活劇を見させてくれた。昨シーズンは達成できなかった3冠も、今の状態なら難しくないだろう。ぜひチャレンジしてほしい。我々もそれに注目していきたい。

 組織内における均衡と不均衡の関係は、組織の内部に危機(リスク)に対して、どれだけの感度があるかだ。高い感度を持つためには、経験値が大きく影響することは間違いない。問題は、その経験値からくる価値観を、組織として共有できるかどうかだ。ここにチーム作りの難しさがあり、日本ラグビーが抱える問題点がある。

文 :今泉 清
写真:(株)スポーツエンターテイメントアソシエイツ/SHOT

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第7節 スケジュール・結果

11/29(土) 13:00 @ ヤマハ

11/29(土) 14:00 @ 秩父宮

11/29(土) 14:00 @コカ・ウエスト

11/30(日) 12:00 @ かきどまり

11/30(日) 13:00 @ 長良川

11/30(日) 13:00 @ 桃太郎

11/30(日) 14:00 @ かきどまり

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