近年、日本ラグビーはトップリーグの開催以来、年々レベルが向上してきている。それは、それぞれのチームが日々努力を重ねてきた賜物である。ひとつのチームが勝ち続けるということもなく、お互いに勝ったり負けたりする状態は、常に組織・集団に不均衡状態が生まれて危機感から緊張状態が生まれる。日本のラグビー、つまり日本代表を強くしていく過程においては望ましい環境だ。
チーム同士が切磋琢磨して、お互いが優勝を目標に掲げて強化していけば、チームレベルの差も縮む。差がなくなってくると、昨シーズンの東芝府中のように継続して勝ち続けることはなかなか難しくなり、今シーズンのトップリーグのように前回の覇者である東芝府中が三洋電機に負ける。その三洋電機がワールドに負ける。そしてワールドはトップリーグ9位になってマイクロソフトカップに出場できないという事態が起こる。試合結果だけでは、どこのチームが強いと判断できない状態になってきた。
お互いのチームが年に何回も対戦することで、チームの癖や試合の中でどんなプレーをしてくるか理解しているので、チーム力に大きな差は出てこない。そうなると勝負の行方は、いかにして自分たちの色を出して試合の流れを掴み、相手チームを自分たちのペースに巻き込んで試合をコントロールするかに懸かる。どのチームも試合の組み立てを考え、自分たちが有利に試合を運べるように方法論を模索することでノウ・ハウが蓄積されていく。そのナレッジ(知識)を日本のラグビー界でシェアすることが、日本ラグビーの底辺レベル向上に繋がるのだ。
このようなレベルで国自体が情報・知識を共有して、国自体のレベルを向上し、発展させていくことを実践しているのが、ニュージーランド・オーストラリアなどの強豪国である。
今回のマイクロソフトカップ2006の1回戦では、まさに上記にあるような切磋琢磨する基盤がシステムとして根付きつつあることを感じさせる試合が繰り広げられた。
秩父宮で行われた第1試合目のクボタvs三洋電機は、クボタの成長・進化を感じさせるいい試合だった。前半の最初はお互いに試合の主導権が取れず、クボタが点を取ると三洋電機が取り返すといった具合。お互いにミスも少なく、締まった試合だった。流れを引き込んだのは、クボタのFBマクイナリ。何度も繰り返し積極的に果敢に攻めるカウンターアタックが均衡状態をブレイク・スルーした。
私は、クボタはトップリーグのときにモール・ラックからの攻撃、つまりフェイズ・アタックのオプションが上手く整理されていないという印象を持っていた。だが、この僅かな時間で整理し、チームの意思統一ができていて、なおかつ全員がゲームプランをよく理解して80分間集中できていた。これが、勝利に繋がったと言える。
反対に、三洋電機は攻撃時に走りこんでくるランナーが浅い状態(相手ディフェンスに接近しすぎて、勢いを付けて、ないしは空いているスペースに走りこめない状態)でボールをもらうので、クボタの選手2~3人にタックルされてしまう。
→早いテンポでボールを動かせない。→テンポが出てこないので球出しに時間が掛かることになる。→ポイントを作ったときに、2人目、3人目が遅れる。→また球出しに時間が掛かる。
これを繰り返すと、なかなかペースを掴むことができない。ペースを掴めないと、集中力が途切れてしまい失点に繋がる。
この試合の三洋電機は、攻撃の途中でリンクプレーヤー、サポートプレーヤーが途切れてしまい、意図しないキックや無意味にランナーを突っ込ませる場面が後半に多々見られた。日本選手権までに、攻撃時のランナーの深さと、3次攻撃までのシュミレーションを組んで整理して、誰がどのポイントに参加して、誰が次のフェイズに参加するのかを整理したほうがよい。意思統一が図れれば、個々の力はあるので、日本選手権で優勝することも十分考えられる。
ほかの3試合では、80分間目が離せない好ゲームを展開したトヨタ自動車vsNEC。今シーズンのベストゲームのひとつに挙げられるだろう素晴らしい試合だった。
戦前の予想では、トップリーグ最多得点を誇ったトヨタ自動車の攻撃力vsNECの「おしんラグビー」(私が勝手に言っているだけです)。つまり我慢のラグビーを展開して、守って守って相手のミスを誘い一気にカウンター、数少ないチャンスを得点に繋げるという、強く意思統一された組織ディフェンスから相手ボールをジャッカルしての速攻を見せるNECという予想だった。
お互いの色の違いがわかりやすいチーム対決を制したのは、動物的嗅覚で相手のボールに喰らいつく、その様子はまるでライオンを連想させるプレーを見せた NECの7番・グレン・マーシュとNO.8の箕内だ。この2人のプレーに触発されたほかのNECの選手たちも、果敢に前に出て行ってタックルに入る。
結局、トヨタ自動車の自慢の攻撃力もハンター集団を粉砕することができず、広瀬のペナルティーゴールしか得点チャンスがないまま試合終了の時を迎えてノーサイド。
NECは80分間、自分たちのディシュプリン(規律)を守って、貫いた。ここにきて、昨年同様、NECがチーム力を上げてきている。準決勝(1/29@秩父宮)、東芝府中との対戦が見ものだ。
東芝府中は神戸製鋼を破って準決勝に駒を進めている。トップリーグではNECが勝っているので、東芝府中のリベンジに懸ける意気込みはすさまじいに違いない。激しい試合、見ている人に骨と骨がブツかり合う音が聞こえてくるような試合。「ラグビーって、格闘技だね」と再認識させてくれるような試合になるだろう。
花園では、サントリーが高速アタッキングラグビーを展開してヤマハ発動機を制した。準決勝では、三洋電機に納得のいくラグビーで勝ったクボタと対戦する(1/29@花園)。お互いに早いテンポでボールを動かすことを身上としているチームだけに、ボールを動かして展開する見応えのあるラグビーが期待できそうだ。
一発勝負のマイクロソフトカップは、リーグ戦と違って勝ちたい気持ちを強く持っている選手が多く存在するチームが、最後まで立っていられる。
近年の社会人チームはどこが勝っても不思議ではないし、どこが負けてもおかしくない状態だ。このマイクロソフトカップで得た経験値は、それぞれのチームの知識として蓄積されていき、ゆくゆくは日本ラグビーの礎になっていくだろう。選手を通して、日本ラグビーが進化していく過程をみることができるのは素晴らしい。歴史の生き証人になれる。
是非、グランドに足を運んでほしい。期待を裏切らない試合ばかりが展開されることを約束する。そして、感じてほしい。選手たちの息遣いや、緊張した顔、ピーンと張り詰めた空気。日々鍛錬されてきた肉体同士が衝突する様を見てほしい。
グランドに来た人にしかわからない何かが、グランドには存在します。
マイクロソフトカップ2006の準決勝が面白い。グランドにラグビーを見に行こう。
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マクイナリ(クボタ)が繰り返し見せた果敢なアタックが、クボタを勝利に導いた。(C)スポーツエンターテイメントアソシエイツ/SHOT
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更新 11月16日 20:34
第7節 スケジュール・結果
11/29(土) 13:00 @ ヤマハ
11/29(土) 14:00 @ 秩父宮
11/29(土) 14:00 @コカ・ウエスト
11/30(日) 12:00 @ かきどまり
11/30(日) 13:00 @ 長良川
11/30(日) 13:00 @ 桃太郎
11/30(日) 14:00 @ かきどまり
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