日本代表ヘッドコーチのエリサルド氏とのヘッドコーチ契約を正式に解除することが決まった。
ことの発端は、エリサルド氏が母国フランスのクラブチームであるアヴィロン・バイヨンヌのスポーツ・マネージャーに就任することが、日本ラグビー協会に何の相談もなく取り決められたことである。
その流れを見てみよう(詳細はこちら)。日本ラグビー協会の太田ジェネラルマネージャー(GM)は再三、エリサルド氏と連絡をとって事態の収拾に努める。太田GMは日本ラグビー協会と会談をするまで就任会見の延期を要請するが、エリサルド氏は日本代表とアヴィロン・バイヨンヌとの兼務は問題ないと主張し、太田GMの到着を待たずにアヴィロン・バイヨンヌのスポーツ・マネージャー就任会見を行った。
その後、太田GMから就任撤回の要請をするも、撤回はできないとの返事だったため、太田GMが帰国してから日本ラグビー協会の理事会で報告し正式に契約解除が決まった。
何か釈然としない。馬鹿にされているような感覚を持ち、怒りを覚えるのは私だけだろうか。日本人とフランス人、人種も違えば、文化も違う。しかし、物事には順番があると思う。
まず、日本ラグビー協会に連絡をして、了解を得てマネージャーになる話を進めるのが物事を決める筋だと思うのだが、その感覚は日本人だけの感覚なのだろうか。いや、やはり仁義を切って話を進めるのが筋だと思う。契約内容に兼任禁止の項目はないと言われればそれまでだし、エリサルド氏にも言い分があるかもしれない。百歩譲ってエリサルド氏にも言い分があり、法的に非がないとしよう。
ただ私は、彼が日本代表のヘッドコーチに就任してからの動向に気なる点があった。
昨年の日本ラグビーのシーズンに、彼は日本国内の試合を数試合しか見ずにフランスに帰国していた。私は最初、その事が信じられずに何か家庭の事情があり、仕方がなくフランスに一時帰国しなければならないのだと思っていた。だが、周囲の話を聞くと、そうではないらしい。
日本代表の選手、この場合エリサルド氏のチーム、つまり自分のチームを作るのに必要な人を選考するのに、自分の目で見て肉体的ポテンシャル・才能・身体能力などを確認して自分のアイディアを膨らまし、この選手なら自分の構想に合うと思った人間を選んでいくのがコーチのはずだ。しかし彼は日本に滞在せず、日本人のセレクターが選んだ選手と、日本からのビデオを見て人選するのだそうだ。情熱を感じない。愛情を感じない。献身的な自己犠牲を感じない。
私はかつて日本国内において、2人の外国人コーチから指導を受けた経験がある。彼らは、今では世界的に有名なコーチとして名前を知られている。1人は、私が早稲田大学時代の時に来日した、現ニュージーランド・オールブラックスの監督であるグラハム・ヘンリー氏。もう1人は元オーストラリア・ワラビーズ監督、現オーストラリア クイーンズランド・レッズの監督であるエディー・ジョーンズである。
グラハム・ヘンリー氏は、日本に長期滞在して毎日グランドに来て細かい指導をしてくれた。ある時、本人の提案により、皆と一緒に皆が食べているものと同じものを食べたい、寮の食事を一緒に食べさせてほしいという。当日、彼はブレザー姿の正装で寮に現れて、我々に敬意を表した。慣れない箸を使って夕食を共にする姿は好感が持てた。そして何より、彼は私達にこう言った。
「いつも私の要求する練習を、一生懸命にやってくれてありがとう。今日は、あなた方が食べろという日本のものを食べます。なんなりと申し付けてください」
我々が用意したのは当然、納豆と梅干だった。彼が苦悶の表情を浮かべて食べていたことを思いだす。我々は、彼の愛情を感じた。一生懸命、我々と打ち解けようとしていたし、日本人の思考を理解しようとしていた。日本人の思考を理解するために、日本の色々な文化に接していた。我々は、グラハム・ヘンリー氏の、その努力がうれしかった。今現在、彼がニュージーランド代表の監督であることも、納得できる。やはりそれだけの器を持った人だと感じさせるものを持っていた。
エリサルド氏は、どうだろう。日本代表の合宿などに、私は参加をしていないし、直接に話をしたわけではないので、人となりはわからない。だがエリサルド氏を見ていて、グラハム・ヘンリーの時に感じたものを感じない。それは、やはりラグビーに対する情熱、同じラグビーを愛する人に対する愛情の欠如なのだろう。
日本ラグビー協会は、エリサルド氏と解約して、これで良かったのだ。そして、日本ラグビーの真価が問われるのは、今である。将来、「あのエリサルド騒動があったから、今の日本ラグビーの発展があった」と、言える状態にしてほしい。
そして今後、もしラグビー日本代表の監督に、また外国人が就任する場合は、ラグビーに対する情熱と愛情に満ち溢れている人が来ることを望みたい。
■日本代表ヘッドコーチに関する記者会見 コメント
http://inews.sports.msn.co.jp/rugby/topleague/news/2006/20060929-836.html
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