第11節の三洋電機vsNECの試合は、三洋電機のSOトニー・ブラウンの攻守に渡った活躍が目立った。NECのNo.8箕内がボールを持つとスピードに乗る前にチェックに入って、すかさずタックルに入っていた。その様子は、捕まえるという表現よりは体を当てにいく、自分の体をぶつけると言ったほうが正しいような場面が何回もあった。
おそらくトニー・ブラウンの頭の中には、浅野、グレン・マーシュの2本柱が出場できないNECは、とにかく箕内を自由にさせなければ大丈夫だという思いがあったのだろう。トニー・ブラウンが箕内にディフェンスに行く時には、強い意志を感じた。
サントリーに第10節で敗れたNECの反省は、FW周辺の近場の攻撃をことごとく止められたという点。そこから、CTBにキース・ラウエンを投入してパンチプレーを選択し、ポイントをずらして攻撃を仕掛けていこうという意図が見えた。だが、肝心なゲームを組み立てる役目を持ったSOの安藤が足の負傷により前半24分で交代。
NECは、試合前に意図したゲームプランの実行すらままならない状態に追い込まれ、FW周辺での攻撃を軸にするしか選択できなくなってしまった。
前半の30分までは3-7とNECがリードして試合は進行していったが、三洋電機は前半32分のCTB山内のトライから反撃を開始。仕込みの時間を終了して仕上げの時間帯に移行すると、一気に24‐7と圧倒し前半を終了した。
後半も、三洋電機は前半の勢いを維持した状態で積極的にボールを動かした。終わってみれば53-14で、三洋電機の圧勝で幕を閉じた。
トニー・ブラウンのゲームメイクは完璧だった。さすがは、元オールブラックスだ。世界のトップレベルのゲームメイクは、本当に参考になった。
基本的に、敵陣に入るまでは無理をせずキックで陣地を取っていく様子を見せていたが、接点の攻防でNECのFWの動きが鈍くなったところを見るや、機を見て敏で、素早く外にボールを展開。外でゲインラインを突破し始めると、攻撃にテンポが出てくるようになり、ますます勢い付いた三洋電機。対するNECは、自分たちの思い通りにいかない試合に、フラストレーションを感じてしまい、細かい反則を重ねた。悪いサイクルにはまってした。最後のとどめは、後半34分にFLのセミシ・サウカウがシンビンにより一時退場。まさに、泣き面に蜂である。この試合は、本当にNECに運がなかった。この試合だけでなく、この2~3試合の間にここまでネガティブなことが起こるとはあまりに酷すぎる。可哀想だ。もうラグビーの問題ではなく、それ以外の問題ではないかと、考えてしまう。御祓いでもすべきではないだろうか。
話を元に戻すが、この三洋電機のトニー、NECのヤコのように世界レベルにあるSOは、大変貴重な存在だ。ゲームメイク、ゲームコントロールの全てを自分一人でやってしまう。一つのチームが、彼が持つ知識レベルまで到達するのに、計算できないくらいの時間が掛かる。その知識を外から導入して、日本人選手に浸透させてレベルアップを図る。
一見すると正論で、もっともな話に聞こえる。短期で考えれば、何も問題はない。しかし、その知識を持った選手が引退してしまったり、移籍してしまったり、怪我で試合が出来ない状態になった時に、チームにその知識が浸透していないと別のチームになってしまうことがある。つまり力が発揮できない状態になる。
日本のチームの場合、外国籍選手を1試合に2人まで出場させても良いことになっている。だから、要のポジションに採用が偏る傾向がある。4番5番のロック、No.8、CTBなどが比較的多い。
短期間にチームを強化しようと考えるならば、ポジションの縦のラインにいい人材を集めればチームとして早く仕上がるからだ。ラグビーでいう縦のラインとは、2番・4番・5番・No.8・SH・SO・CTB・FBのことを示す。どのチームもこれらのポジションの人材補強を最優先に行う。それで、どこのチームを見ても同じポジションに外国籍選手の顔ぶれが目立つのだ。
この現象は、日本ラグビーのレベルの向上には、大きく貢献しているが、デメリットもある。それは、縦のラインのポジションにおける日本人プレーヤーの生息率を低下させる要因の一つに繋がっているということだ。ゲームメイクをする上で重要なポジションだけに、それぞれのチームで時間をかけて育成していかないと、ゆくゆくは日本ラグビーの選手層の薄さに直結する話になる。これも日本ラグビー界で取り組んでいかなければならない今後の課題だろう。
そんなことを、今回の試合を観戦していて、ふっと思った。
- スポーツトップ
- ラグビー
- 今泉清コラム「スーパーアタックル」
- 記事全文
注目情報
ラグビー 今泉清コラム「スーパーアタックル」
【第9回】第11節の試合で感じたこと ~チームの強化と、日本の強化と~
ラグビー 最新コラム 今泉清コラム「スーパーアタックル」
- 【今泉清のスーパーアタックル2008:第6回】「日本のオリジナル」を育てる、とは 11月12日 14:39
- 【今泉清のスーパーアタックル2008:第5回】上下の差がなくなってきたトップリーグは、群雄割拠の様相 10月29日 19:05
- 【今泉清のスーパーアタックル2008:第4回】第4節を終了して ~今季、要注目のチーム~
10月16日 10:42 - 【今泉清のスーパーアタックル2008:第3回】調整週に入ったトップリーグに思う~トニー・ブラウンの正確無比なキックの背景~ 10月4日 00:17
- 【今泉清のスーパーアタックル2008:第2回】 ELV導入で、これからのチーム強化の道とは…
9月18日 22:40 - 【今泉清のスーパーアタックル2008:第1回】08年トップリーグ開幕!~試験的ルール導入が与える影響とは?
9月4日 17:43 - 【第8回】プレーオフトーナメント マイクロソフトカップを終えて
2月26日 19:22 - 【第7回】マイクロソフトカップの見どころ 2月14日 14:52
- 【第6回】意思統一されたチームスタイル確立の必要性 2月1日 14:56
- 【第5回】チーム作りのペース配分 1月23日 17:26
[PR] お役立ち情報
特集ピックアップ
PR
ラグビートピックス
更新 11月16日 20:34
第7節 スケジュール・結果
11/29(土) 13:00 @ ヤマハ
11/29(土) 14:00 @ 秩父宮
11/29(土) 14:00 @コカ・ウエスト
11/30(日) 12:00 @ かきどまり
11/30(日) 13:00 @ 長良川
11/30(日) 13:00 @ 桃太郎
11/30(日) 14:00 @ かきどまり
ラグビー情報
ラグビースケジュール
トップリーグ全14チームの試合、イベント情報をチェック!
スタジアムマップ
迫力あるラグビーの試合を生で観よう! 試合場へのアクセスはこちらから
ルール・ポジション講座
ラグビー観戦がもっと楽しくなる! ラグビーのルール、ポジションについて知ろう
ラグビー用語集
もう難しいとは言わせない! ラグビーでよく使う用語をわかりやすく紹介します
チーム紹介
Microsoft CUPミニ・ラグビー交流大会2007
PR
このページ上に表示される記事内容、あるいはリンク先の記事内容はMSNおよびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
Copyright © International Sports Marketing Co.,Ltd. All rights reserved.
掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。著作権はISMに属します。


